クリエイターズ・レターVol8にて発表された認定ジャッジシステム。今回インタビューさせていただいたのは、そこへ応募されるLumines(水谷陽介/26歳)さんです。
黎明期の静岡CSの制度設計を担当し、マネジメント部分などでも活躍した彼はどのような人物なのでしょうか?
(※応募フォームにHNを書く欄がないことからジャッジは実名での活動が予測されるため、ジャッジ志望者インタビューでは本名を併記させていただいています)
■経歴
*入賞歴*
公式大会:GM中部Bブロック優勝
*運営歴*
第1-3回静岡CS:スコアキーパー
GP1st:サブリーダー
■インタビュー
――本日はよろしくお願いいたします。まず、デュエルマスターズはいつごろからプレイされてるんですか?
「第1弾から10弾までプレイしてて、その後に極神編で復帰しました。公式の戦績としてはGMエリア予選優勝が思い出深いですね…全国決勝初戦でPULU(GM日本王者)さんに負けました!」
――今はMtGをメインでプレイされてるんですっけ?
「そうですね。当時のデュエルマスターズは年に1度の公式大会しか全力でプレイできる場所がなくて、競技的なイベントを求める中でMtGに惹かれていって…そんな中で出場したおっことぬし(桃太郎決闘祭主催者・やまなCS運営)さんの桃太郎決闘祭で旧友のThunders#36(静岡CS主催/藤枝CC主催・GP1stサブリーダー)と再会して、現行の大会を改善してみないか?と持ち掛けられました」
――そこからCS運営へ携わったと
「そうですね。現在のスイス8回戦という形式や当日のスタッフの動きなど多くの制度を設計しました。ジャッジのためにMtGのジャッジ指針を渡してあげたりとか。他にも勝利者インタビューやメタゲームブレイクダウンなど、自分がほしかったものも含めて色々やってます」
――スコアキーパーというか何でも屋ですね
「Thunders#36と意見がかみ合ってたのが幸いしました。フィーチャーテーブルとか、メタゲームブレイクダウンとか、スイスドロー形式はあいつも大好きで。第2回と3回で静岡はいい感じになったので自分は離れたんですけれど、結局あいつとはGP1stで同じジャッジチームになり、二人でサブリーダーを務めました」
――影響を受けたプレイヤーはいますか?
「大体静岡の人と遊んでたからなぁ…名前言っても伝わらなさそうです。あえて言うならネレイズ」
――ネレイズ?
「その当時、強かったプレイヤーですよ。今はアキバでカードショップやってます」
――ちなみに店名は
「トレカ侍だったかなぁ…来いって言われてるんですけど、機会がなくて」
――マジで!?行ったことありますよ、僕。珍しくDMの扱いがそれなりにあると思ったらそういう
「そうなんですね。あいつ、夜中の2時半に電話かけてきたりするんですよ。寝てるっつーの(笑)」
――全然知らなかった…
「それに引き換え、自分の今住んでるところにはカードショップがないんです。イベントも、近所で東海CSがあったぐらいかな。MtGをプレイするためには名古屋まで出てこなきゃいけなくて…結局MO(マジックオンライン)の導入に至りました」
――GPへ参加したのは、どうしてですか?
「公式が競技的な部分に目を向けてくれた、と言うのが嬉しかったんです。スイスドロー形式で、カバレージもあって」
――形式にはこだわりをお持ちなんですね
「選手としても運営としてもそうですね。卓制って大変なんですよ。昔の公式大会の8人卓制は3-0しても抜けられない場合がありましたし、運営としては受付後の選手を卓にどう割り振るかが課題になる。以前参加した卓制のイベントで運営が割り振りを失敗して、1人卓が出来てたことがあったんですよね」
――1人!?
「そういうこともあって、静岡CSでは第2回から全勝者が出るまでスイスドロー形式で対戦を行うことにしました。当日、何が起こっても大丈夫なように事前準備で企画に突っ込みを入れ続けて…」
――タイムテーブルなんかも難しい話ですよね。休憩入れるかどうか、とか
「デュエルマスターズはシングル戦なんで、休憩は必要だと思いますよ。マッチだと早く終わった時に何か食べに行けるんですけど、シングルは時間がないからダメ。
形式の話で言うと、あとは時間切れの処理とかかな。GPのやり方はうまいと思いましたね。エクストラターンに入った瞬間めっちゃ考え込む人がいると大会進行に影響出ちゃうんで、そこに左右されづらい仕組みはいいと思います」
――負けた方に1点の勝ち点を与える方式については、どう思われますか?
「投了を簡単に誘発するんで、どうなのかなーと。そういう話で言うと、俺はオポネント・ゲーム・ウィン・パーセンテージを重んじるのも好きじゃないんですよ。2-1で勝った試合全てで”2-0にしてくれませんか?”みたいな交渉が発生しうるわけでしょ」
――まあ…IDや投了交渉も言うだけタダになっちゃうみたいな話はありますしね。さて、イベントの仕組みづくりを担ったLuminesさんからイベント運営初心者の方に向けてアドバイスがあれば是非!
「CCって言う形式はすごくいいと思います。ああいう形式から始めてみて、色々試行錯誤していくのがいいんじゃないかな。
やっぱり最初は失敗するかもしれないし、仲のいい友人たちとやるのがおすすめです。公認大会の仕切りとか、お店にお願いしてやらせてもらうのもアリ。
そういう方に向けて、先に色々やってみたものとしてテキストを残していきたいですね。アカレコにも結構期待はしてますけど」
――恐れ入ります。次世代の育成なんかについてはどうお考えですか?
「マニュアル作りたいなー、という気持ちはあります。それと、スタッフって必ずしも一つのイベントに縛られる必要はないかなと思ってて。
直近で言えば、浜名湖CSって静岡CSのメンバーで結構やってるじゃないですか。そういう、メンバーは8割がた一緒で2割ぐらい新規のメンバーを入れてみる、そして育成につなげる…というモデルを考えてます。ジャッジ資格によって人材の流動性は高まるでしょうし、今後はそうしたモデルが可能になっていくでしょうね」
――なるほど…逆に、選手としては競技的なTCGイベントについてどうお考えですか?
「楽しいですけど、仕事には絶対できないなって感じてます。仕事にしてもこういうのを楽しめるのって、渡辺雄也(チームMINT所属のMtGプロ)プロのような仕事と遊びの境目が薄い人じゃないと無理じゃないかな。渡辺プロはほんとすごいですよ。一生MtGしてても飽きなさそうで」
――MtGプロで思い出しましたが、デュエルマスターズの殿堂レギュってMtGでいうレガシーに相当すると思うんですけれど、レガシーってどれぐらいプレイされてるんですか?
「え?みんなほとんどやってないですよ」
――え?
「全然競技フォーマットとして採用されてないじゃないですか。日本ではようやく最近GPのフォーマットになったぐらい。やっぱりスタンダード(直近1年半のカードを使えるレギュ)ですよ」
――すると、モダン(2003年7月以降のカードを使えるレギュ)も…?
「モダンも言うほどかなぁ…制限改定を結構ダイナミックにやってくれてるので、そこはいいと思いますけどね。まあ、スタンが最高ですよ。
でもいろんなフォーマットがあるって言うこと自体は素晴らしい。フォーマットが増えることによって、プレイヤーの取り上げ方も多種多様になるでしょ?ドラフトがうまい、いわゆるドラフトプロっていう着目の仕方とかね」
――着目と言えば、今のデュエルマスターズではカバレージが導入されています
「アレはデュエルマスターズをあまり知らない人に見せられるという点で優れてますよね。
プレイヤーをフィーチャーしているのもいいと思います。今までは”CSで○○(デッキ名)が勝った”って言う言われ方が主でしたけど、これからは”××(プレイヤー名)が勝った”と言われるようになっていくんじゃないでしょうか。ああやって対戦に付加価値をつけていくのは大事なことですよね」
――プレイヤーにフィーチャーと言えば、Luminesさんは静岡CSでプレイヤーインタビューを導入されていました
「勝った人がデッキ解説まで細かく書ける人だといいですけど、必ずしもそうじゃないですし。みんながみんな時間があるとも限らないので、ああやって話を伺うのは面白いんじゃないかなと」
――釈迦に説法でしょうけど、結構文字起こしするの大変ですよ
「まあ…ゲストは良くてもライターに負担はかかりますよね。そういう意味では、文章がうまい人やしゃべりがうまい人もフィーチャーされて、活躍できるようになっていくといいな」
――結構いろいろ考えてらっしゃるんですね。ショップを開くご予定とかは?
「まだプレイヤーでいたいですよ。近くに店がないんで自分で開いてやろうかと思ったことがないわけじゃないですが」
――簡単な話でもないですしね。今後望む制度なんかはあります?
「情報交換する場が欲しいってのはありますね。GP1stはそういう意味でもよかった。CS間の交流ってなかなかないんで、GPでいろいろ話を聞いたり伝えたりして、それをまた地元で伝えられるのはいいことです。
後は、ジャッジになるための勉強の指針があれば…試験をするとは言っても、どんな勉強したらいいのかわかんないじゃないですか。何か手引きがあるといいですね」
――MtGだと、ジャッジになる際の制度はどうなってるんですか?
「レベル2のジャッジが、新たなレベル1を認定するという制度になってます」
――そういう役割が設けられてるんですね。今後はどのようにデュエルマスターズへ関わろうと思っていますか?
「今のところはThunders#36の補助が出来れば、と思ってます。色々協力していきたいですね。
選手としては、ドラフトのイベントをやってほしいです。構築の大会に出られるほどカードがない!」
――3月にHEAVEN’S DICECSっていうドラフトのイベントが開かれるそうですよ
「お、いいじゃないですか。アレは手ぶらで行っても大丈夫なので好きなんですよね。パックのチェックをどうするのかとか、卓への着席とかいろいろ大変かもしれませんが、期待してます。公式がチェックリストを作ってくれたら楽になるのかもしれませんね。
チームドラフトのようなまだ行われていない種類のイベントはあると思うので、今後は自分でもチャレンジしていきたいです。予選は構築戦で、トップ8からドラフトで戦うとか…いろいろ考えてますよ」
――これは期待大ですね!最後に伝えたいことがあれば、お願いします
「TCGに競技として真剣に取り組むのは大好きです。これからは、そうした競技イベントの魅力を伝えることも出来ればなおいいのだろう、と思ってます。静岡CSのフィーチャー制度なんかがそうですね。
プレイヤー目線から見ると今の公式はとてもプレイヤーのことを考えてくださってると思いますし、今後にも非常に期待が持てます。ほんと、楽しみです!」
■インタビューを終えて
僕がLuminesさんに初めてお会いしたのは、第5回静岡CS。1日目の夜に夕食をご一緒させていただいたり、2日目の中継の空き時間埋めとして話させていただいたりしました。
僕の興味がある分野と彼が担当されていた分野がたまたま被っていたためか、いつ伺っても興味深い話が尽きません。タイムスケジュールからオポネントまで幅広くわかる方はあまりいらっしゃらないので、とても助かります。
インタビュー中でも出てきた”プレイヤーへフィーチャーする”という話は、なかなか難しいことだと最近感じています。このインタビューもそうなんですが、個人の魅力をきっちり拾い上げ、細大漏らさず伝えるのってとても難しいんです。今回インタビューから書き起こしまでやってるのは僕ですけど、僕は特別な訓練を受けたプロってわけじゃありませんからなかなかうまくいきません。相手が知り合いだから、なんとか話を伺ってそれらしいものを作れているのかな、と自分では思っています。
今後、新しい試みを行うイベントなんかではどうしても現場作業が輻輳してしまうと思いますが、そうなったときにLuminesさんのような事前の準備を徹底して行われる方の存在は重要になってくるでしょう。
認定試験に、Luminesさんが合格されることを祈っています。