【プレイヤーインタビューin横浜CS】えじまさん(チームAkashic Record)

デュエマにおいて、新たなアーキタイプの登場によってメタゲームが激変することは過去幾度もありました。今回インタビューさせていただいたのは、かつてヒラメキスネークを作成し環境を激変させた恐るべきデッキビルダー、えじま(19歳)さんです。

CS黎明期から活動し、次々と新たなアーキタイプを生み出す彼はどのような人物なのでしょうか?横浜CSの場をお借りしてインタビューさせていただきました。

 


■経歴
*運営歴*
・おやつCS関東大会:ヘッドジャッジ

*入賞歴*
公式大会:PS関東エリア代表予選4位、E3関東エリア代表予選優勝
CS:プレイヤー個人戦績(えじま)

 

■インタビュー
――本日はよろしくお願いいたします。まず、デュエルマスターズはいつごろからプレイされてるんですか?
「小学校1年生のころからやってましたよ。姉が周囲とプレイしていて、それにつられて僕も…青緑のリキッド・ピープルを使ってたんですが、あのころはトリガーが高くて買えなかったんですよね。信じられないと思いますけど、ナチュラル・トラップですら1000円前後でした」

――そこからずっと辞めずに、現在に至ると。
「ええ、西葛西のピットインさんにお世話になってます。
ピットインさんは元々おもちゃ屋さんで、僕はベイブレードで遊んでた4歳の頃から通ってるんですよ。6歳からはデュエマを初めて…本当にずっとお世話になってます」

――4歳!
「そうなんですよ。
中学2年生の頃、ちょっとデュエマにお金を使いすぎちゃって親に怒られたんですよね。捨てるぞ!って脅されて。それ以来カードは友人宅に避難させて、辞めたような顔で過ごしていたんですが、去年の12月に見事にばれました(笑)」

――あらら。
「たまたまカードを広げてデッキを考えていた時に寝落ちしちゃって、そのタイミングで部屋に親が入ってきて…でも全国大会に行けるレベルだと伝えたら、なんだか納得してくれちゃいました。
父親は高校野球で甲子園まで行った経験がある元球児、母や姉もバスケプレイヤーのスポーツ一家なのに僕だけTCGプレイヤーで、ちょっと肩身が狭かったんですよね」

――そうだったんですね。えじまさんがCSに出始めたのは、いつごろからなんですか?
「初めて出たのは第4回関東CS。中学2年生の時ですね。
僕は人と同じデッキを使わないというポリシーがあって、その時は青黒ハンデスを使いました。
結果は、ホーガンに負けただけの4-1で予選抜けから決勝1回戦でドロマーハンデスに負けてベスト16。アヴァラルド公つっよ!!って思いました。ポリシーゆえに使わなかったんですが…」

――アヴァラルドなしで予選を抜けたのは凄いと思います。
「それ以来、関東圏のイベントを中心にCSへ出るようになりました。第1,2回下町CS(2011,2012年)ではベスト32、そして第3回下町CS(2012年)で黒緑速攻を使って優勝することが出来ました」

――N・ワールド→ベニジシ・スパイダーのコンボデッキ、通称”えじまスパイダー”が誕生したのもこのころでしたっけ。
「スパイダーは、第5回川崎CS(2012年)午前の部でベスト8、午後の部で4位という戦績をもたらしてくれました。この頃からいろんな方に名前を知ってもらえるようになり、智リットル(かつて関西で活動していた強豪)さんたちと話すようになりましたね」

――アクア・メルゲ亡き後の新たな墓地ソース、メカオー墓地を編み出したのは翌年、2013年ですよね。
「そうですね、これは権利戦や第4回仙台CS(2013年)で使用しました。
仙台CSでは予選を抜けるも残念ながらベスト16で負け。そこからサブイベントの一発芸大会があるということで、出場することにしました」

――えじまさんがビルダー以外に持つもう一つの顔、パフォーマーEJIMA!
「出場に当たって念入りにメタ読みをしたところ、前回の一発芸大会で優勝したのはカードのモノマネだと言う情報をキャッチ。前回優勝のジャンク選手はパイプ椅子の背もたれと座面の間の隙間に体を挟んで”地獄スクラッパー!”と叫んだそうで、自分もカードのモノマネで行こうと心に決めました。

すぐさまサインペン片手にトイレへ駆け込み、トイレ使用者の”何してるんですか?”という質問を”こういう趣味なんですよ”とかわしつつ、当時80㎏あった自分の腹に絵を描きます。
そして一発芸大会、おもむろに服を脱ぐと”タイム・トリッパー!”と叫んで優勝をかっさらいました」
teitai

――す、すごい!(笑) 噂では、1日に3大会開催されたと聞きましたが…。
「2ラウンド目はパイプ椅子に脱力して座り、”パクリオ!”でこれまた優勝です」
(ここからえじまさんの実演開始)
pakurio

――(笑いすぎた為、適切なコメントを発することが出来ませんでした)
「3ラウンド目はデビル・ドレーンのモノマネで準優勝。ドラえもんに泣きつくのび太君のモノマネをした小さい子が同情票を集めて優勝。僕は鬼丸覇2枚と最新弾を2箱、それに永遠のリュウセイ・カイザーなんかももらって、本選で優勝したような気分でした。
当然総合優勝も僕だったんですが、そこで急にモノマネを振られて。パッとアイデアが浮かばなくて、手近にあったカードをつかんだらハングリー・エレガンス。取りあえず飛び跳ねて”ハングリー・エレガンス!”って言ってみたんですが、皆引いてましたね。さっきまで笑ってたのに!(笑)」
dore-n
eregansu

――みんな冷たい(笑)
「実際のところ、僕は人前に出るのはあまり得意じゃないんですよね。そんな僕が人前で脱ぐ日が来るとは思いもしませんでした」

――いやでも滅茶苦茶アクティブですよね、羨ましいです。
「そうですか?(笑)
話を戻して、第4回仙台CSの少し後。僕は秋葉でガブリエラにヒラメキ・プログラムを当ててザビ・ミラを出すデッキを見かけました」

――まさか…。
「その時に思い付いたのが、ガブリエラにヒラメキを当ててスネークを出すデッキ、ヒラメキスネークです。当初はウェビウスなんかも入ってて、vaultでしばらく回していました。
ただ僕はローランが強いとは思ってなかったんですよね。後手に回った場合、相手のマナ加速からの吸い込むが間に合ってしまうので」

――スネークの採用カードで驚かされたのは、オボロカゲロウです。
「僕は最初、ブレインストームを使ってました。そこから鬼面城やエマージェンシー・タイフーンを経てオボロカゲロウの採用に至りましたね。
E3の頃にこのデッキが勝ち始めたときはビックリしましたよ。え、昔触ってたやつじゃん!と思って」

――確か1度、西日暮里でアーキタイプとして紹介されたんですよね。
「そうなんですか?それは知りませんでした」

――そんなヒラメキスネークも、殿堂入りによって消滅してしまいます。
「ヒラメキ殿堂と同時期にアトランティスが追加されました。それをきっかけに組んだのが、マーシャルループです。
アトランティスを転生スイッチで戻し、ナンバーナインを出したら強いんじゃないか?というのが最初の考え。でもこれだけだと、リスクに見合わなくって辞めました。カードの使用枚数に見合わない強さだと思って。
そこで見出したのが、STで呪文を回収できるクリーチャー、サルヴァティを使ったループです。すったもんだの末、004(チーム岡山・認定ジャッジ)と一緒にルールを調べ、ループの成立を確認して作り上げました」

――マーシャルループは滅茶苦茶盾を増やして勝つデッキ、という印象が強いです。
「アレフティナを使うパターンですね。実は最初、iFormulaX+打つべしナウを使っていました。マーシャル・クロウラー+転生スイッチでちょうど出せるんです。
しかしiFormulaXは、ハンデスなどで一度墓地に落ちてしまうと回収出来なかったんです。そこで湧水の光陣で蘇生させられるアレフティナを採用。

こうして作り上げたマーシャルループ、僕は下町CSでベスト32に入ったのみにとどまりましたが、養分丸がFBCS3位という成績を残してくれました。
盾がガンガン増えるので、ビジュアルがすごかったですね」

――様々なアーキタイプを開発してらっしゃるんですね。
「人と違うことをしたい、という気持ちが根底にあるんです。本当は普通のデッキの方が勝てるんじゃないかと内心密かに思ってます(笑)
ただ最近はまた変なデッキを使うようになってしまって…社会人になってからは時間も減っていますし、こんなことしてる場合じゃないとは思うんですけどね」

――今日(第2回横浜CS)の使用デッキは?
「ダーツデリートです!オールデリートでドキンダムの封印を全て吹き飛ばそうというのがコンセプト。
今日は4人で同じデッキを使ったんですが、なんと予選1回戦目は全員合計でまさかの0-8!2回戦目はまさかのミラーで相手が投了!」

――まさかすぎる(笑)
「クライスCS(2015年)で使ったボルドギ入りのNEXTなんかは良かったんですけどね。元々は原(チーム原一派リーダー)さんが、半分冗談で”ボルドギでモーツァルト出したら強くない?”って言ってたのを僕が引き継ぎました。
クライスCSのVS赤単レッドゾーンでは、ボルドギ3枚を抱えてあー(東北の古豪)さんに勝利出来ました。

あの時の原さんのような、周囲の一言からデッキを作ることも結構ありますし、みんなには感謝してます。
まあ何でも試してみて、ダメならやめればいいだけですからね。アンテナの感度を高めてアイデアを拾っていくことが勝ちにつながると思いますよ。なお今日のダーツ…って感じですけど!(笑)」

――ダーツ、面白そうなんですけどね。
「ダーツは最初は超次元が出る前に使ってましたね、フェルナンドを4枚入れてました。テクノロジーやロストソウル、ラスバイにエターナルソード…とにかく強いカードにダーツを当てればいい!と思って。申し訳程度にプライマルスクリームもいれてました。

中学生からずっとそうなんですけれど、○○を使いたいという思いが僕のデッキづくりの出発点なんです。そこに人と違うことをしたいという気持ちが加わって、いつの間にかいろんな人と知り合いになれました。
”みんなと違うことをしたい”って言う気持ちはあまり良いイメージがないかもしれませんが、少なくとも僕の人生は良い方へ変わりました。周りと同じことばっかしてたって、楽しくないですしね」

――誰かの影響があったんですか?
「なつめ(ラン速)さんです。地元が同じ西葛西で、中学生当時の僕から見てちょっとした有名人という感じでした。
なつめさんは青単にハヤブサマルを入れたパイオニア的存在で、僕が人と違うことをしたいと思うようになったきっかけもそれなんです。
アロマが殿堂入りした後に僕は青単ヒャックメーを組んでたんですが、完全に影響されてましたね。違うことをしたいという一心でそのデッキを触り続けて、最終的にリバイヴやシャイニーを投入。鬼面の効果でデッキ下にカードを戻し、ランブルを覚醒させるデッキになりました(笑)」

――ヒャックメーはどこへ(笑)
「Mロマが強かった時期も、流行りの黒Mではなく白Mを組んでました。シャイニーやコルテオ、城砦なんかが強くって」

――一体、どこからそんな発想が?
「親にカードを制限されたことが、結果的に良かったのかもしれません。カードが手元にないときはずっと頭の中で考え続け、友人と遊ぶとき…つまりデッキを回せるときはひたすら回す。今思うと、メリハリのある調整をしてたわけです」

――それで現在のようなビルダーになられたんですね。
「ですかね。よくビルダーって言っていただけているのはありがたいのですが、実際どうなんだろうと自分ではよく思っていて。
確かに作ったデッキは多いかもしれませんが、勝ってる時に限って自分のデッキじゃなかったりしますよ」

――昔から多くの新たなデッキを世に送り出してきたえじまさんのこと、僕は素晴らしいビルダーだと思ってます。
「昔かぁ…そうですよね、6歳から始めてもう13年。
それでふと思い出したんですが、僕のTwitterアカウントのアイコンって、僕の土下座写真なんです。小学5年生の時に待ち合わせに10分遅刻したらなつめさんが怒っちゃって、それで土下座した時に撮影されたのがこのアイコン。

なんとなくアイコンにしてたら、ミジンコさんっていう西葛西に住んでいたイラストレーターの方がアイコンに羽根をくれたんです。バトスピのカードイラストを描いたこともある方で。
もしなつめさんと会ってなかったらそういう出会いはなかったわけで…なんていうか、すごく周りに恵まれたなぁって思うんですよ。アカレコのライターもやらせていただいて。
冗談抜きで僕はなつめさんを含むみんなに感謝してます。向こうが僕のことをどう思ってるかはわからないですけれど」

――人生万事塞翁が馬という通り、何がどうなるかわからないものですよね。ひょっとしたら、えじまさんも誰かに大きな影響を与えているかも。
「影響か…おやつCSに出たとき、全然知らない人にお礼を言われたことがありました。
聞けば、その人は僕のマーシャルループを見てデュエマの面白さを知ったとのこと。それで今まで続けられたんです!って、言ってもらえました」

――滅茶苦茶いいエピソードじゃないですか。
「まあ、その人が使ってたのはNEXTだったんですけどね」

――マーシャルじゃないんかい!(笑) ところでえじまさんは、良いデッキを作るためにどうすべきだと思いますか?
「今だと入賞リストがそこら中にあるので、デッキを作るだけなら何も考えずに作れちゃいますよね。でもカードを採用する、またデッキを作るに際して自分の意見を持たないのはあまりよくないと思っています。有名な人がこういってたから、とかそういうのは成長につながりにくいかなと。勿論その人の解説を読んだうえで同じデッキを使うのは別ですよ。

ただ最近はみんなTwitterをメインに使っていますよね。140字だと書けることより書ききれないことの方が多いので、解説は端折られがち。
だからリストをコピーするだけでなく、リストをあげている人に質問している人はこれからも伸びると思います」

――コピーするだけだと成長しづらいというくだり、完全に僕ですね…。それはさておき、今後のデュエマはどうなっていってほしいですか?
「やっぱり、MtGみたいになってくれればと思っています。競技デュエマというか。
Heaven’s Diceのような動きはとてもいいですよね。競技的な動きは、コンテンツをなくさないためにも必要かなと思います」

――ありがとうございます。最後に一言!
「これからも今まで通り、デュエマを頑張ります!今後もよろしくお願いします!」

――ありがとうございました。

 

■インタビューを終えて
僕がえじま君に初めて会ったのは、第4回静岡CSで。
これまで様々なパフォーマンスで場を沸かせてきた彼の第一印象は、落ち着いた好青年でした。とても礼儀正しかったことを覚えています。

何度か会っているうちにわかったのですが、彼のビルディングセンスは図抜けています。
インタビュー当日、僕は赤黒レッドゾーンで横浜CSに出場し、あえなく8-4で予選落ち。2週間ばかり調整したのに勿体ないしもう少しプレイしていこうとえじま君に挑むと、イメンを組むので少し待ってくれとのこと。
そして3分で完成した彼のイメンに見事に0-3しました。僕がド下手だったのも無論あるんでしょうけど、それでもここまでひどい負け方をしたのは久しぶりでした。僕の2週間…。

そんなビルディングセンスに優れ、パフォーマンスもうまいえじま君。GP2ndでは一体何を見せてくれるのでしょうか。
今後のえじま君の活躍を願っています。


カテゴリ:インタビュー