wrote by 美墨なぎさ
11月23日から始まるDM甲子園エリア代表決定戦及び公認イベントとして行われるDS限定構築戦について記述をします。
個人的な見解が多く含まれるため、あくまで一人のプレイヤーの意見としてお受け取りください。
○DS限定環境において有力であるデッキタイプおよびカード
・最有力と思われるデッキタイプ(いわゆるトップメタ)
■バトライ閣
■エビデゴラス
■イメン=ブーゴ
■グレンモルト
■黒単
■ヘブンズゲート
またこの中でも特に環境の中心となるであろうカードを挙げますと、
▽《爆熱天守 バトライ閣》
▽《龍波動空母 エビデゴラス》
▽《龍覇 イメン=ブーゴ》+《邪帝斧 ボアロアックス》
▽《音感の精霊龍 エメラルーダ》
▽《終末の時計 ザ・クロック》
辺りでしょう。
上記を前提として今回のDS限定構築戦について考えますと、
1:《解体人形ジェニー》、《パクリオ》(ピーピングハンデス)がないことでデッキの役割を遂行することに長けたデッキが強くなる
2:速攻がいないため、スタートのゆっくりなデッキでも活躍出来る
以上の二つの点が通常環境との特に大きい相違点だと思われます。
ピーピングハンデスの不在は最も簡易且つ有効な妨害手段が無いということを意味し、「やりたいことをやる」デッキがその役割を遂行する上でより楽な構築やゲーム展開を行える環境であることになります。
またランダムハンデスが少なく相手による選択ハンデスが多い、《百発人形マグナム》や《デュエマの鬼!キクチ師範代》、《禁術のカルマ カレイコ》のようなメタカードも少ない、そして《マナ・クライシス》や《焦土と開拓の天変》などの簡易的なランデスカードもない、など全体を通して妨害手段が非常に薄い環境であると言えます。
これが通常環境であれば、役割遂行に特化したデッキは様々な面でこのような妨害カードに対するリカバリーに苦しむ(構築面だと墓地回収やメタカードの除去等、プレイ面だと相手の動きに対する手札の持ち方などが必須となる)ところですが、DS限定環境ではそうでないため非常に楽だと言えるでしょう。
したがって、そのようなデッキが勝ちやすい環境であると自分は考えます。
さて、速攻がいないことによる環境形成への影響は周知だと思うので省かせて頂きます。ここで重要なのは「スタートのゆっくりなデッキでも活躍できる」という点です。
ここで言う「スタートのゆっくりなデッキ」というのはメインの動きのスタートがゆっくりであるという意味ではなく、1、2ターン目に使えるカードが少ないデッキという意味のものです。
速攻がいないため最序盤のめまぐるしい攻防はありませんが、DS限定環境では中盤から畳み掛けるように動くデッキタイプが多くあります。ですから、メインの動きが中盤から始められるようなデッキでないとその流れについていけなくなるでしょう。簡単に言えば、2マナ《フェアリー・ライフ》でスタートして4マナや5マナの解決カードを撃つ必要はないけれど、3マナから繋いで5、6、7マナではしっかり動けるカードを用意しておくことが大事な環境だ、ということです。
○DS限定環境のメタゲーム変遷予想
おそらく環境の中で台風の目のような役割を持つ「バトライ閣」の対抗馬として、《音感の精霊龍 エメラルーダ》+《終末の時計 ザ・クロック》という強力な防御カードを搭載可能な「イメン=ブーゴ」「ヘブンズゲート」や、早い段階で大きな打点形成が出来る「グレンモルト」という図面を中心に他のデッキが点在するという形の環境に始まり、先に行われていくエリア予選で結果を残したデッキが意識されたメタゲームが展開されると考えています。
カードパワーで勝るバトライ閣やビートダウンの速さで勝るグレンモルトに対して、イメン=ブーゴ側が《音感の精霊龍 エメラルーダ》+《終末の時計 ザ・クロック》による擬似的なエクストラターンを得ながらのカウンターフィニッシュという形で応じるでしょう。イメン=ブーゴやグレンモルトの中でも安定感を取ったり、黒単やヘブンズゲートなどに勝ち星を稼ぎたいプレイヤーが青を入れて《龍波動空母 エビデゴラス》を採用する感じだと思います。
この記事の冒頭で、多く登場するであろうデッキタイプとして黒単を挙げています。これは通常環境に近い構築が可能に見えるため一定数の使用者が出てくるだろうという意味で挙げたのですが、実際は痒いところに手が届かないカードプールと環境に多く存在するであろうエビデゴラスの採用されたデッキに絶望的な不利がつくため、トーナメントを勝ち抜くのは難しいと考えています。しかし上述の通りおそらく一定数の使用者が出てくるため、黒単に有利を取られるデッキの使用者はこれを度外視していると卓予選などで思わぬ痛手を強いられたりするかもしれません。
そしてメタゲームが展開される上で重要となるのがシールド・トリガーのケアです。環境に影響を及ぼすカードの中でも一番重要視するべきは《音感の精霊龍 エメラルーダ》、そしてその相棒になるであろう《終末の時計 ザ・クロック》を始めとしたシールド・トリガー関連です。
通常環境でいう《超次元ホワイトグリーン・ホール》+スパーク系、もしくはエメラル系+《終末の時計 ザ・クロック》的な位置のものですね。DS限定構築のカードプールには《不敗のダイハード・リュウセイ》《トンギヌスの槍》のようなシールド焼却がないため、対策として必然的にシールド・トリガーを使わせないカードが必要となってきます。
○シールド・トリガーを巡るカード群
◼︎龍世界 ドラゴ大王
《爆熱天守 バトライ閣》から踏み倒せるドラゴン。12000以下のクリーチャー1体を焼きながらロックを行うことができ、フィニッシュ時以外でも前のめりに活躍できます。
相手のドラゴンに対して無力なのが玉にきず。
◼︎界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ
バトライ閣から踏み倒せるドラゴン。優勢時は《龍世界 ドラゴ大王》より優秀だが、場への干渉能力が無いためフィニッシュ時以外は使い辛い印象を持ちます。
◼︎聖霊王アルファディオス
役割は《龍世界 ドラゴ大王》に近いが、こちらはドラゴンに対して強いのがポイント。母なる聖域のサポートは受けられるものの、進化元が必要であることに加え、光文明であるという使い辛さが難点でしょうか。
◼︎偽りの王 ナンバーナイン
バトライ閣から踏み倒せるドラゴン。《終末の時計 ザ・クロック》のようなクリーチャーではなく呪文(スパーク等)が対象です。呪文が強い環境ではないので、クリーチャーに対して干渉できる《龍世界 ドラゴ大王》などが優先されるでしょう。
◼︎勝利宣言 鬼丸「覇」
エクストラターンによる擬似的なトリガーケア。クリーチャーにも呪文にも効果的だが運が絡む1枚です。
以上が代表的なカードです。
コストの大きいクリーチャーしかいませんが、ほとんどがバトライ閣から踏み倒せること、また《龍覇 イメン=ブーゴ》と併用することで実質全てを踏み倒せる《我臥牙 ヴェロキボアロス》がDS限定環境にはいるのです。こういった踏み倒しカードを上手く使うことで勝ちに近付ける試合が多いのではないでしょうか。
それを踏まえて、特に多いであろうアーキタイプを見ていきましょう。
○各デッキの構築とプレイング
バトライ閣
主に赤単と赤緑に分かれると思います。「やりたいことをやるデッキ」の典型ですね。環境にハンデスが少なく、ランデスや踏み倒し対策カードもないので非常に動きやすいです。
速攻がいないため、3ターン目のチャージャースタートになる赤単でも充分に戦えます。《モエル 鬼スナイパー》や《熱血龍 バトクロス・バトル》のお陰で《爆熱天守 バトライ閣》のヒット率を下げることなくシールド・トリガーを積めるのもポイントですね。
相性違わず理不尽を押し付けることのできる一方で、グレンモルト系や超次元ビートのフルタップでの攻撃に対しシールド・トリガーを踏ませられない場合は苦しいです。また《終末の時計 ザ・クロック》を使われると大変厳しいため、《龍世界 ドラゴ大王》か《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》の採用はほぼ必須だと思われます。
《龍覇 グレンモルト》がサブフィニッシャーレベルの扱いになるほど攻撃力が高いデッキなので、《龍覇 グレンモルト》に防御面での役割を与えることができます。例えば赤単の場合3→5→6で動く場合チャージャー→除去(《モエル 鬼スナイパー》、《英雄奥義 バーニング銀河》、《天守閣 龍王武陣》)→《龍覇 グレンモルト》のような動きになり、5の除去で盤面を減らしておけば6で投げる《龍覇 グレンモルト》&《神光の龍槍 ウルオヴェリア》で相手の《龍覇 グレンモルト》や《龍覇 イメン=ブーゴ》+《爆轟 マッカラン・ファイン》に対してかなり時間を稼ぐことができます。この状態で《龍覇 グレンモルト「爆」》+《爆熱天守 バトライ閣》まで繋げれば攻撃回数も増えますし、隙のないゲームを作っていくことができます。
同系戦では、《永遠のリュウセイ・カイザー》、《熱血龍 ガイシュカク》、《覇闘の将龍剣 ガイオウバーン》の3枚がキーカードです。同系に6マナで《龍覇 グレンモルト》を投げる時は、《爆熱剣 バトライ刃》を付けるよりも《熱血龍 ガイシュカク》を設置した方が強いです。2000のパワーライン補正は相手に《覇闘の将龍剣 ガイオウバーン》の使用を促し、《爆熱天守 バトライ閣》に走った場合は返しに《永遠のリュウセイ・カイザー》を出すことで非常に優位な盤面を作ることが出来ます。ついでに《熱血龍 バトクロス・バトル》が9000火力になったりします。
エビデゴラス
恒久的にアドバンテージを稼ぎながら、アンブロッカブル持ちの強力な打点になるカードですね。《有毒類罠顎目 ドクゲーター》や《英雄奥義 バーニング銀河》など簡易的に除去できるカードも増えてきましたが、ドローよりもむしろ除去の効きにくいアンブロッカブルというのが厄介なカードだと思っています。
《龍覇 グレンモルト》と2枚看板で早くからの打点と安定したゲームを作る赤緑青、《龍覇 イメン=ブーゴ》+《電脳決壊の魔女 アリス》で優勢を取り、《邪帝遺跡 ボアロパゴス》を早期から作ったりして《音感の精霊龍 エメラルーダ》で時間を稼ぎながらコントロール気味にゲームを作る青緑白カラーのデッキなどが多く見られると思います。
後者について触れると一番怖いのは時間切れですね。特に同系では《音感の精霊龍 エメラルーダ》での埋め合いになるため《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》や《聖霊王アルファディオス》の採用がほぼ必須になります。これらを盤面に出すために如何に早くマナを大きく伸ばすか、もしくは《邪帝遺跡 ボアロパゴス》を《我臥牙 ヴェロキボアロス》へ龍解させるかが重要になるのですが、その時に重要なのがこの《龍波動空母 エビデゴラス》です。このカードをより早く出した方がより多くのアドバンテージを稼ぎ、目標である大量のマナへ早く達します。同系では《龍波動空母 エビデゴラス》を早く出すかもしくは《有毒類罠顎目 ドクゲーター》などで上手く相手の《龍波動空母 エビデゴラス》を消せるかが特に重要になると思います。
イメン=ブーゴ
攻撃面も防御面も非常に優秀で、環境で1.2番を争うほどの採用率が予想されます。
攻撃面では《爆轟 マッカラン・ファイン》や《逆転王女プリン》によるいきなりの打点超過、防御面では《音感の精霊龍 エメラルーダ》はもちろんアドバンテージを伸ばしながら殴り返しに備えたり《邪帝遺跡 ボアロパゴス》に龍解させカウンターを狙ったり出来ます。
《邪帝遺跡 ボアロパゴス》は非常に強力なカードです。稼ぐアドバンテージも相当量。《天真妖精オチャッピィ》からマナの《終末の時計 ザ・クロック》を飛ばすなど、一度龍解すれば《音感の精霊龍 エメラルーダ》を採用していないタイプでも堅牢な防御を見せるでしょう。また《有毒類 ラグマトックス》+《アクア忍者 ライヤ》で無限除去が出来たり、擬似的なループも行うことができます。
ヴェロキボアロスはイメンブーゴと併せることで進化も含めマナにある全てのクリーチャーを踏み倒せます。青緑白の同系ではここまで龍解させブラッキオやアルファを投げるところが目指す到達点の目安になると思われます。
グレンモルト
超次元と合わせて早い段階での打点形成が非常に強力。このゆっくりとした環境の中では一番早いデッキタイプとなるのではないでしょうか。
しかし通常環境と違い解体などのハンデスが無いのと、《時空の喧嘩屋キル》が無いので「溜め」の戦いが下手になっています。基本的に突っ張っていくしかないため、非常にトリガーに弱いのが気になるところです。
ただ《熱血星龍 ガイギンガ》の龍解が通った時は通常環境以上に止められ辛いので、リスクを考えても”ライフオチャモルト”などを狙う価値は十二分にあるでしょう。また、前述の《龍波動空母 エビデゴラス》や《龍覇 イメン=ブーゴ》にもすんなり入るだけのフィニッシュ力があり、デッキのサブウエポンとしての活躍も見込まれます。
黒単
今回のカードプールで作ることのできる黒単は大きく分けて二つ。ひとつが小型ハンデスと優秀な除去札を駆使し、次元や《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》による打点形成でフィニッシュする通常環境で多く見られるタイプに近いもの。
もうひとつはファンキー・ナイトメアを軸とし、《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》の蘇生を基盤にアドバンテージを取りるタイプです。新しく登場した《悪夢卍 ミガワリ》そしてスレイヤー化を行える《魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ》、ふたつの突破力・ビートダウン性能を活かした優秀なドラグハート軍勢で勝利を目指します。
どちらにしてもとにかく《龍波動空母 エビデゴラス》が怖いですね。また後者は《龍覇 イメン=ブーゴ》などに対して《爆霊魔 タイガニトロ》を噛ませられなかった時、増えたハンドで《音感の精霊龍 エメラルーダ》+《終末の時計 ザ・クロック》で時間を稼がれるのが非常に怖いです。
《龍波動空母 エビデゴラス》はアンブロッカブル・(黒単からは)除去が効かない・ハンドソースとなると書いてあること全てがDS黒単に対して有利なテキストとなっています。そして《龍波動空母 エビデゴラス》でハンドが増えることで上記の《音感の精霊龍 エメラルーダ》+《終末の時計 ザ・クロック》を行えるのですが、これもまた黒単では盾を退かすことが出来ないためタイムアドバンテージを渡す形となります。
アンブロッカブルかつ除去の効かない《龍波動空母 エビデゴラス》に対してタイムアドバンテージを渡すということは、不可避の二打点を喰らうこととほぼ等しいのです。ですから、ビートダウンするにも《爆霊魔 タイガニトロ》などは必要になるでしょう。
とにかく出来るだけ早期のアタックを心掛け、ゲームの主導権を握る姿勢が重要になります。
個人的には、後者のファンキー・ナイトメアによるビートダウンの方が安定した勝ちを望めると考えています。
というのも、前者のハンデス軸は通常環境と違い自らアドバンテージを形成できるカードが少ないこと、環境の中心であるフォートレスを退かせないことが辛く、フィニッシュに時間もかかるためエビデゴラスやバトライ閣に不利が付きやすい上時間切れも怖いんです。
それならばフォートレスも除去できる、アドバンテージも稼げる、赤青黒などでハンデスする方がまだ安定した勝ちを残せるように感じます。
DS限定環境のカードプール的には厳しいかもしれませんが、搭載可能なカードの多さ故ビルダー・プレイヤーの上手さに左右され易いデッキです。度重なるエリア予選の結果により、後半の方では少しずつメタゲームが変化して有利な環境になるかもしれませんね。
以上が、DS限定構築戦の環境考察です。自分もまだ見極め切れていない部分は多々ありますし、人によって考え方・感じ方は全く違うと思いますが、私としてはDS環境に対してこういった印象を受けました。
地雷にも例年通りワンチャンスどころかツーチャンスありそうな曲者が集まっていて面白くなりそうですね。どんなデッキが勝ち上がってくるのか、非常に楽しみです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
HN:美墨なぎさ
【主な戦績】
おやつCS2014 summer festival九州大会 優勝
勝-1グランプリ九州大会ベスト8
第一回九州CS ベスト8
福岡在住のデュエルマスターズプレイヤー。物腰柔らかな好青年だが、ブログでの舌鋒鋭い記事は多くの人を魅了してやまない。
デッキ構築の上手さに定評があり、おやつCS2014 summer festival九州大会では九州の環境を読み切った赤黒モルトで見事8-0しチームを全国へ導いた。