【プレイヤーインタビュー】phalanxさん(マークロループ開発者)

年々CSの数が増え、活気づく神奈川。そこで活動するプレイヤーもまた、増えていると言います。

今回インタビューさせていただいたのは、そこ神奈川で活動するphalanx選手(22歳)。超次元の襲来とともに競技DMへ触れた彼は、コンボデッキの達人として知られています。
中でも、彼の名を一躍全国に轟かせたのはあのマーシャル・クロウラーループ。積極的にループデッキをCSへ持ち込む彼は、どのような人物なのでしょうか?

 

■経歴
*入賞歴*
公式大会:PM関東Bブロック準優勝
CS:プレイヤー個別戦績(phalanx選手

 

■インタビュー 
――本日はよろしくお願いいたします。まず、デュエルマスターズはいつごろからプレイされてるんですか?
「ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンのパックだから…DM-6?」

――まさか、B・W・Dを当てて始めた…!?
「いやいや(笑)
最初は買ってすらいなくて、もらったカードで始めましたよ。DM-01のパックを貰って、ギガジール黒単を組んでました。
でも、すぐ飽きて辞めちゃいましたね。当時はまだ小学3年ぐらいで、カードを買ってもらえなくて…あんまり遊んでもなかったので」

――早い(笑)
「とは言ってもその後、中学時代にたまーに誘われたりして遊ぶぐらいのことはしていました。そして高校受験を終え、開放感に満ち溢れていたタイミングで友人に誘われて、デュエルロード(当時の公認大会)に出たんです。

最初はネクラギャラクシーを組んで、遊んでいました。もうあのころは、パーフェクト・ギャラクシーが1枚制限だったかなぁ…。
一緒に遊んでた友達がPULUさんの大ファンだったんですよね。それで、PULUさんが使っていたリストと同じものを使っていたんです」

――ネクラギャラクシーを使っていたんですね。昔のphalanx選手と言えばドロマーハンデスの印象がありました。ところで、CSへ出始めたのはいつごろからですか?
「CSに出始めたのは、第4回関東CS(2011年)から。超次元全盛期で、ドロマーミラーが頻発していた時代です。
出場した理由は特になくて、強いて言えば近かったからなぁ。当時一緒に遊んでいた氷、bazilと連れ立って会場へ行きました」

――この時の使用デッキは、やっぱりドロマー?
「ええ、ドロマーです。当時のドロマーは人によってリストに好みが出るアーキタイプで、自分はドローソースとしてクロックタワーを採用していました。アヴァラルドを引けばミラーに勝てると思っていて、少しでも引く確率を上げたかったんですよね。
まあ、この時は相手のレイン・アローに手札から根こそぎハンデスを抜かれて負けたんで、あんまり関係なかったんですけど(笑)

次の第5回関東CS(2012年)は出る予定じゃなかったんですが、VGのパックを買ったらちょうど参加費が捻出できちゃって、それで参加しました。
この時は第4回関東CSのサブトーナメントで使って調子が良かった黒緑速攻を選択。ベスト8入りし、CS初入賞を経験しました」

――ドロマーや黒緑だなんて懐かしい…当時のphalanx選手が、vault大会に出てはアヴァラルドを引けないと言って悩んでいたことを覚えています。
「vault!懐かしいですねほんと…。
当時のvault大会はかなり人が多くて、大会中にサーバが止まってしまうこともありました。

ある日、たまたま自分が対戦席に着いた時にサーバが止まったことがあって。それで、僕のせいでサーバが止まったとあらぬ疑いをかけられ、プチ炎上みたいになってしまったこともありました。
今思うとアレのおかげでフォロワーが増えたので、良かったのかもしれませんね(笑)」

――そして公式大会の戦績を見ると、phalanxさんはPM関東2位(2010年)ですよね。
「ええ、赤緑速攻を使いました。ミラー対策として入れた地獄スクラッパーが大活躍してくれて。
決勝ではネクラコントロールのオルゼキアに屈してしまいましたが…。

この時は銀のGENJIプレートを頂いたんですが、実は3週間ぐらいで売っちゃったんです」

――って売ったんかい!
「大体みんなそういう反応するんですけど、アレ実際貰ったら困りますよ。置くとこないし。
ご存知かわかりませんが、青丸っていう知り合いに売りました。お値段3万円!」

――紅茶選手と同じ、チーム”やばいやつ”の方ですよね。名前は存じ上げています。
「そうそう、その人です。

結局勢いが良かったのはこのあたりまでで、準優勝の後はしばらく苦労しました。
最近見たインタビューであばばばさん(E1日本一)が似たようなことを仰っていて、共感を覚えました。彼と比べたら、僕の戦績は大したことないですけどね。
公式で勝って調子に乗ってた時期もありましたが、DMはそんな奴が勝てるほど甘くなかったです!」

――トップレベルの戦績を持つ選手たちも、人知れず悩んでいるんですよね。ところで、他のゲームを遊んだりはしなかったんですか?
「遊ぶには遊んでたんですけど、始めて2カ月で辞めたりしちゃったました。遊んだことがあるタイトルは、WS、BS、VG、Z/X、遊戯…かな。なんだかんだDMが一番長く続いてますね。

どうしてDMだけ長く続いているのかは、正直わかりません。単純にゲームが面白いってのがまず一つかな。他は…よく言われる”勝てるから”って言うのもあるでしょうし、クラン縛りがなくて構築の幅が広いゲームなので飽きにくいのも長所。
自分は昔のカードの知識があって、いろんなデッキが組めるので。そういう部分に面白さを見出しているのかもしれません」

――ちなみに、ループと向き合い始めたのはいつごろから?
「自分は最近ですよ。以前、アカレコでゲストとしてジャスティスループの記事(2015年)を書かせていただいたことがありましたが、ちょうどあのころからです。
アレより前はジュカイとか、フォーミュラを使ってました。

カードゲーマーにはカードを売らないタイプとすぐ売るタイプの2種類の人種がいると思うんですが、僕は後者。同じデッキを使っていると飽きちゃって、新しくて強そうなデッキがあるとちょっと買い足して組んじゃいますね。
その時不要なカードを売っちゃうんで、常に最低限のカードしか持ってません。今なんて、VV8しか持ってませんよ」
(※本インタビューは、GP4th開催前に行われています)

――じゃあ、いつもループを使っているわけではないんですね。なんだかそんなイメージがありました(笑)
「そうですね、いつもではないです。人よりは多いかもしれませんが。
例えばGP1stはジャスティスループ、2ndは緑天門でしたが、3rdは赤黒バスター。
…という感じで、3rdの時なんかはループではなくビートを使ってましたね。あの時は新弾3日後がもうGP当日で、調整してる時間もないしカードパワーの高さで誤魔化すしかない!と思って。
2ndの時の緑天門は、原一派とは別で独自に組んでいました」

――緑天門って、原案は誰なんですか?
「最初に使い始めたのは、確か静岡のマイキー(浜松CS主催)さんだと思います。その影響を受けたかずー(横浜の強豪)が使うようになって、原一派に伝わって…と言う流れだったんじゃないでしょうか。
自分もかずーから聞いて組んでいただけに、原一派に負けたのは悔しかったです!」

――次に、マーシャル・クロウラーループについてお聞かせください。どうやって見つけたんですか?
「あのデッキ、最初はカンゼンクライムで呪文を回収してマークロで使うループだったんです。アガサ・エルキュール経由でカンゼンクライムを出してて。
それを回しているうちに”マークロから出せばいいんじゃないのか?”と、まず気づきました。10コスのアトランティスに転生スイッチを当てると、カンゼンクライムに変わるんです。
ここは結構試行錯誤してて、パーフェクト・アースなんかも試してました。

次に気づいたのは、山札に戻す行為の強さ。墓地から回収する必要なんかない、悠久プリンで山に戻して引けばいいんだ!と」

――パワーワードが来ましたね。”引けばいいんだ!”。
「実はこの頃、MtGに興味を持っていて。それでオムニテルというデッキを知ったんです。あのデッキを見て、ドロースペルをひたすら唱えるという考えを取り入れました。フィニッシュはそのうちでいいやと。

そうした気づきもあって、パーフェクト・アースを試してから3時間ほどで最終系に近いところまで辿りつけました。
ここまでは一人で作業してたのですが、さすがにここからは一人じゃ進まなくて。36枚決まったところで、知り合いに渡して一緒に調整しましたね」

――途中まで一人で考えてたんですか!?すごい…いったいなぜ、そこまでの努力を?
「デュエルマスターズって、ミラーマッチで差がつきにくいんですよ。だから流行っているデッキを使うと、負けやすいんです。僕が流行から少し外れたデッキを好んでいるのはそういう理由から。

でもそうしたデッキを組むためにはそれなりの発想が必要で。思いつくかどうかは、結局運なんですよね。
だから何度も組んで崩して考えて、唯一解を目指すんです。いわゆる調整は、正しい発想に辿り着くためのツールだと思ってます」

――そして、アカシックレコードCSに持ち込んだと。結果として総合ルールも変わりました。
「あの時はご迷惑を…本当はGP2ndに持ち込むつもりだったんですよ。でも渡した知り合いがCSで使っちゃって、じゃあもうアカレコCSで使うしかないと。
結局ループが完成してない状態で持ち込んじゃったんですけど…相手が投了してくれるかなぁと思ってたんですよね。エクストラターンの時間制限なかったし、いけるかなと」

――GPでお披露目だったら、ジャッジ的には大変な事態になってたかも。ところで、普段の調整はどのように行っているんですか?
「僕、基本的には一人回ししかしないですよ。去年の4月あたりから対人調整をほとんどしなくなっちゃって。他人と回すのはデッキをシェアするときやチーム戦に出るときぐらいですね。
それでも一応CS優勝は出来てます。

というのも、自分の組むデッキがデッキなので…マークロループなんて、目の前で回されてもしょうがないじゃないですか。
公認もあまり出ないですし、下手するとCSが調整の場とも言えますね」

――その甲斐あって(?)、GP2ndではマークロループを使ったせいな選手が優勝しました。GP2ndまで伏せておけば、ひょっとしたらphalanx選手が優勝したかも?
「そうかもしれませんね。ただ優勝リストにアレフティナが入っていたのはショックでした。
アレフティナによるエクストラWinって、アレフと転生スイッチの2枠を使うフィニッシュ方法なんですよ。でもララバイによる山切れで勝つのなら、枠はララバイ1枚で済む。
ループ使いとしての僕の美学に反するんですよ、アレフ」

――でも、アレフの方が手順が簡単なんですよね?GPの長丁場だと、ミスを減らすためにはアレフ型の方が良かったのかも。
「普通の人はそうかもしれないですけど、僕はララバイで1日戦えるので」

――すごい自信だ…一人回しってそんなに良い調整法なんですか。
「逆に普通の人ってどうやって調整してるんでしょ。対人とかなんですかね、やっぱ。ループを使っていると対戦相手は壁でも大丈夫なので、あまり必要性を感じませんが…。

ループ以外のデッキを使うときは、対戦相手がこう動いてくるだろうという想定を立てて、一人回しをしています。
例えばNEXT相手なら、4tにスクチェンマナロックを決めてくると想定し、3tにシャッフで3を指定しておくとか。そうした調整を繰り返してシャッフは必須だなと感じ、4投するに至ったことがあります。流行っているデッキを理解し、それへの対処を繰り返す…と言う形ですね」

――流行っているデッキの情報は、どこから手に入れているんですか?
「他人の調整結果や内容を見て学習しています。デッキ同士の相性なんかは他人の情報を信じて、それを前提にデッキを組みますね。
デッキは割と組めるほうなので、それで助かっているとこはあります。

こうしたやり方を会得したのは、2013年のフォーミュラの時期。DMオンラインというソフトでひたすら一人回ししていました。その時うまくいったので、現在まで続けています。
人のデッキが回せないタイプなので、こうして1から組まなければならないという事情もあるんですけどね」

――一人回しは、調整方法における最適解ではなく、自分に合った手法に過ぎないと。
「ええ。やっぱTCGってチーム戦だと思うんですよ。ヘブンズダイスとかもろそれじゃないですか。集団で集まって調整環境を構築した方がいいですって。レベルの高い集団から情報を貰うと、やっぱ勝てますもん。

僕の住んでる横浜はそういうチームもないし、あまり意見交換もしないんですけどね。同じ地域に住んでる他人って感じが近いです」

――次に、影響を受けた人について教えてください。
「まずはRotさん。E1当時にシロガシラ・ジュカイを回していた人で、僕も同じくジュカイを触っていたので影響を受けました。マイナーなカードや細かくカードを使って勝つデッキを組むようになったのは、あの人の影響です。

2人目は、ヴァンさんかな。高校で復帰した時にヴァンさんの動画があって、それを結構見てました。当時はカードキングダムやDeadman(WotC)の動画も見てましたよ。

後は…最近で言うと、GP3rd2位のともさんに影響を受けていると思います。たまに謎プレイをしちゃう時もある人なんですけど、考え方がすごい。
本人がそう思っているかどうかはあまり定かじゃないんですが、その時々の結果よりもアベレージを重視しているような雰囲気があるんですね。何度か大会に出て、どれかで勝てればいいやと。
以前の自分は絶対にここで勝たなきゃという思いが強かったのですが、その考え方が変わったのはともさんの影響だと思います」

――最後に、今後のDMに望むものを教えてください。
「ランキングのポイント配分を何とかしてほしいです。MtGっぽい雰囲気の制度なのはいいとおもんですが、制度設計がちょっと…。
デュエルマスターズってとっかかりやすくて、いろんなゲームのポータルになってると思うので、そういう意味では分かりやすい制度なら中身は重視する必要がないのかもしれませんけどね。

現行の制度で言うと、CSサポートは良いと思ってます。今もDMを続けてるのは、これに依るところが一番大きいかも。
GPに出ているのもそう。うっかりベスト8に入れば50万なら、とりあえずやるかって感じですね

そして最後に…第2回アカシックレコードCS、待ってます!また斬新なループを持ち込みたいんで、是非お願いします!!」

――斬新なループを持ち込むときは頼むから事前に連絡してくれ!ありがとうございました!!

 

■インタビューを終えて
僕が初めてphalanxと出会ったのは、第2回下町CS。彼がvaultサーバを止めた(?)頃からTwitterでの付き合いはあったのですが、会ったのはあの時が初めてでした。

そして3年の時を経て、第6回静岡CSで再会。3年経っても雰囲気は変わっておらず、なんとなく安心したことを覚えています。
その後もAkashic Record Champion Ship 1stやレジェンドCSまで参加しに来てくれて、嬉しかったですね。

僕にとっての彼の印象は…ループへの造詣が深く、変わったカードを好んで使う選手。昔はそうでもなかったのですが、彼が言っている通りジュカイの頃からデッキの方向性が変わってきたようです。
プレイヤーとして数々の戦績を残す彼ですが、僕から見た彼の真髄はやはりビルダーとしての技術。どうしても大会で入賞した選手だけが評価されがちですが、入賞歴だけがデュエルマスターズの強さじゃないよなと個人的には思っています。

今後も、phalanx選手がクレイジーなデッキを開発していくことを(そして本当にヤバいデッキを使うときは運営に連絡してくれることを)願っています。


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